画像診断
腹部大動脈の蛇行が原因と考えられた腎出血
神林 知幸
1
,
甲斐 文丈
1
,
新保 斉
1
1磐田市立総合病院泌尿器科
キーワード:
腎出血
,
CT
Keyword:
腎出血
,
CT
pp.255-257
発行日 2004年3月20日
Published Date 2004/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100480
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患者 75歳,女性。
主訴 肉眼的血尿。
既住歴 得記すべきことなし。
家族歴 得記すべきことなし。
現病歴 2002年5月1日肉眼的血尿が出現し,同日当科を受診した。
現症 腹部所見などに異常を認めなかった。
検査成績 血液生化学検査に異常を認めず,検尿で潜血(3+),尿沈潜で赤血球9/視野,尿細胞診は陰性であった。
画像診断 超音波断層像では腎臓・膀胱に特記すべき所見は認められなかった。排泄性腎盂造影(図1)では著変を認めず,5月1日の腹部単純CT(図2)で左腎静脈の拡張が疑われたため5月15日造影へリカルCTを施行した。造影初期の横断像(図3)では、腹部大動脈は右方に偏移しており,左腎静脈の拡張および腹部大動脈の全面で牽引によると考えられる狭小化が認められた。なお上腸間膜動脈と腹部大動脈との間隙は十分に保たれていた。冠状断像(図4)では,腹部大動脈は腎動脈分岐部直下より右側に大きく蛇行していた。CT血管造影像(図5)では,腹部大動脈の蛇行に伴う左腎静脈の拡張,狭小化が明瞭に抽出されるとともに卵巣静脈の拡張が認められ,側副血行路の発達が考えられた。以上より腹部大動脈の蛇行による腎静脈のうっ滞が血尿の原因と考えられた。なお,約1年経過観察をしているが,肉眼的血尿の再発は認めず,尿沈さで赤血球1~2/視野認める程度である。
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