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1 診療の概要
副腎性器症候群とは副腎の種々の疾患により過剰な性ホルモンが分泌され,主に外性器系に何らかの異常を生ずる病態である。ほとんどの症例は先天性副腎過形成で,ごく一部が性ホルモン産生腫瘍である。前者と後者では臨床像は著しく異なり,今日ではこれを一緒のカテゴリーにくくるのは無理がある。また,副腎性器症候群という病名自体が乳幼児,思春期の患者,またはその両親などに提示する病名としては適切でない。これらのため,副腎性器症候群という呼称は今日では臨床の場では使用せず,具体的な病名を使用したほうがよい。
先天性副腎過形成(congenital adrenal hyperplasia:CAH)は,副腎のステロイド生合成酵素系の先天的障害により性ホルモンが過剰に分泌されるものである。副腎皮質および性腺でのステロイド生合成経路とこれにかかわる酵素系を図1に,CAHの病型と臨床的特徴,内分泌所見を表1に示す1~3)。これらの酵素障害型のうち90%以上を占めるのが21-ヒドロキシラーゼ欠損症(21-hydroxylase deficiency:21-OHD)である。21-hy-droxylase(21-OH)が障害されると17-hydroxypro-gesterone(17-OHP)が蓄積し,これがアンドロステンジオン,さらにはテストステロンなどの男性ホルモンに変換されて性器系の男性化をきたす。第6染色体短腕に機能遺伝子(P450c21遺伝子)に異常を生じたもので,劣性遺伝を示す。臨床的には単純男性化型,塩喪失型の古典型が重要である。酵素障害の程度が強く,女児で生下時から外性器の強い男性化,特に陰核の著しい肥大がみられる。塩喪失型では生後1週間頃から塩喪失現象をきたして生命にかかわるので,特に注意を要する。また,酵素障害の程度が軽く,思春期頃に男性化症状を認める遅発型(late onset form),内分泌学的には異常がみられるものの,臨床症状を呈するに至らない潜在型(cryptic form)の存在も知られている。これらは非古典型と呼ばれている。臨床的には大きな問題とはならない。今日では古典型で成人まで放置される症例はきわめて稀であるが,治療が不十分な場合などに副腎の過形成に腫瘍の合併がみられることがあり注意を要する4)。
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