特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
1.尿路・性器の炎症性疾患
■非特異性感染症
【尿道憩室炎】
21.尿道憩室炎または尿道周囲炎が疑われる女性患者です。対処と処方について教えて下さい。
石井 泰憲
1
1石井クリニック
pp.75-77
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100229
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1 診療の概要
女性の尿道憩室は尿道との交通を有する囊状腔を形成する憩室で,尿道腟中隔部にみられるものと定義されている1)。尿道憩室の発生については,Johnsonによると先天性と後天性があり,先天性ではWolf管の遺残であるGartner管の囊腫,Wolff管原基の不完全癒合による囊腫形成,尿道中隔囊腫などが尿道に開口して憩室になるとされている2)。しかし,後天性のほうが圧倒的に多く,(1)分娩による尿道損傷,(2)尿道腺の感染,(3)尿道の機械的操作による損傷(膀胱鏡など),(4)尿道狭窄,(5)尿道結石による損傷,が挙がっている。尿道の周囲に存在する分泌腺である尿道腺からの尿道傍管が外尿道口に多数開口しているが,この分泌腺は臨床的に慢性化した細菌感染の病巣になりやすい。先天的に感染に弱いこの部分では細菌の感染が起こりやすく,感染を起こすと尿道周囲炎になる。外傷,感染により尿道周囲腺が炎症を起こし膿瘍になり,尿道へ破裂して憩室になることも想定される3,4)。
尿道憩室の発生頻度は泌尿器科を受診する患者の1.85~4.7%に認められる。尿道憩室の好発年齢は分娩外傷の関与が多いためか22~25歳と報告されている5)。尿道憩室は尿道の後壁の中央部で形成され,ほとんど感染を伴っている。症状は外尿道口部の腫脹,圧迫感,性交や歩行時の不快感,下着の汚れなどである。診察すると腟前壁の腫瘤,外尿道口よりの排膿がみられる。血膿尿,排尿痛,排尿困難,反復性尿路感染症もあり,治療として細菌感染の治療と手術が必要になる6)。
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