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2005年の第57回日本泌尿器科学会西日本総会は岡山大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器病態学公文裕巳教授を学会長として,「変革の時代に泌尿器科はより魅力的になれるか」をメインテーマに11月17日から19日まで岡山市で開催されました。学会場は岡山駅の西口前の岡山コンベンションセンター(別名ママカリフォーラム:「ままかり」とは瀬戸内海でとれる海魚の別名ですが,ご飯と一緒に食べるとその美味しさのあまり思わずご飯が足りなくなり隣の家にご飯を借りに行かなければならなくなるということからその別名が付いたそうです)を主会場として行われましたが,コンベンションセンターの隣には,つい先日完成したばかりのリットシティビル(岡山全日空ホテル・オフィスなどが入っています)がそびえ立ち,ここは六本木ヒルズか? と見間違えるばかりの景色(少しオーバーですが)に変貌しつつありました。小生が学生時代を過ごした20年前は,岡山駅の西口周辺と言えば,よく言えば「三丁目の夕日」に出てきそうな昔懐かしい昭和の雰囲気を残したちょっと危ない地域でしたが,日本経済の立ち直りの波がようやく岡山にも届いてきたようで,スーツ姿の素敵な女性が闊歩する街へと変貌してきておりました。それらの女性の発するエストロゲンの方に吸い寄せられそうになる気持ちを抑えつつ,学会を拝聴させて頂きました。
11月17日の各種委員会に引き続いて,11月18日,19日には一般演題,ワークショップ,手術中継等々盛りだくさんの内容が盛り込まれておりました。本学会のテーマは冒頭にも述べましたが,「変革の時代に泌尿器科はより魅力的になれるか」でしたが,ワークショップでは「これからの泌尿器科専門医研修とその課題」との命題で,カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)教授の篠原克人先生の基調講演に引き続いて,EU,シンガポール,そして日本の各大学での泌尿器科専門医研修の現状と今後の展望が報告されました。基調講演で篠原先生は,米国における泌尿器科の卒後教育の状況についてお話されましたが,UCSFでは,3人のレジデントの定員に対してなんと190人ほどの応募があり,160人を書類選考で落とし,残りの30人から3人を選ぶということでした。米国での泌尿器科専門医の人気は高く,入局希望者を確保するのに四苦八苦している日本の状況とは雲泥の差のようです。また,米国では泌尿器科レジデント研修プログラムにおける質の保証が,日本とは桁違いに高いレベルであることにも驚かされました。きわめて多い症例数を短期間で経験し,かつ客観的なフィードバックが定期的に行われており,非常に理にかなった研修システムが構築されていました。病院の規模,症例数も異なり日本との単純な比較はできませんが,手術のskillという観点からみれば,専門医取得時点での日米の差は大きくならざるを得ないと思われます。日本の各大学もそれぞれ,系統的な研修システムを構築する努力をしていましたが,正直なところまだまだ今後の課題も多いようです。大学や,泌尿器科医だけでは何ともしがたい問題もありますが,泌尿器科がより魅力的になるためにも,臨床研修医や医学部の学生にアピールできる専門医研修システムを,一大学や一病院ではない広い視野で考えていく必要性が痛感させられます。
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