Derm.2002
医学教育
三橋 善比古
1
1山形大学医学部皮膚科学教室
pp.142
発行日 2002年4月10日
Published Date 2002/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412903950
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長く大学にいる関係で医学教育の末端を担っている.卒業してすぐに役立つ医師を養成するとかで,大学における医学教育は大きな変革の時を迎えている.模擬患者を使って診察を訓練するOSCE(オスキー)を実施したり,講義に対する学生の評価も行われている.どちらも私達が学生の頃にはなかったものである.もっとも,講義に対しての評価は内々では大いに行われていたものだが.
医学教育について考えるとき,心に浮かぶことがある.学生のときの教室内のことである.それは3年生のときの教室の片隅で,ガラスの箱の中にぶら下がって私達を見守っていた全身骨格標本である.当初はインパクトがあり,薄気味悪いなどと思っていたが,そのうち意識にも入ってこなくなり,学年が上がって,その教室を離れた後も,卒業してもずっと思い出すこともなかった.医学教育を考えるようになって,ふいにこの人を思い出した.遺族と思われる人達が,1年に1度この骨の前で供養を行っていたことも思い出した.この人は医学部の先輩であったと聞く。何も語らずジッと見ているのみであったが,この人は骨の解剖学についてではなく,医学教育全般について大事なことを語りかけていたのではないかと思うようになった.
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