Derm.2002
忙しくて楽しい
小林 里実
1
1東京女子医科大学皮膚科学教室
pp.133
発行日 2002年4月10日
Published Date 2002/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412903947
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3年前,留学の機会に恵まれ,アメリカで2年間皮膚免疫に関する研究を行うかたわら,回診などにも参加させていただいた.回診後のディスカッションに参加して,ある強い印象を得た.レジデントをはじめ皆が生き生きとディスカッションに参加し,活気があることである.この活気はどこからくるのか.臨床に携わるわれわれの日常はとにかく多忙である.日常診療とそれにまつわる業務に追われ,毎日が過ぎていく.これらの業務をこなしつつ,毎年まとまった数の医局業績を出すには,個人の生活時間を削るしかないのかと感じてしまう.もちろん,彼らも多忙であるに違いない.指導者の層を厚くしづらい,医者以外の人間が雇えないなどのシステムの違いもあろうが,加えて,多忙をエネルギーに換える雰囲気づくりの上手さの違いではないかと感じる.われわれは狭い世界で競っているために息がつまるのではないだろうか.机を並べて仕事をする仲間同士で競い合うだけでは,能率が悪く,個人のエネルギーをlossする.彼らは自分たちが1つのチームとして助言し合い,成果のみならず,多忙も失敗も当然のごとく分け合って,それを評価し合う.成果を共有し,次々と共同研究を生み出していく.アメリカ人は個人主義と思っていたが,個人を尊重しつつチームワークを組むのが実に上手い.“忙しくて楽しい”と思えるような雰囲気づくりは,医局員全員の責任である.それがディスカッションの雰囲気にも自然と現れるのか,ディスカッションを有意義に能率よく進める責任を,参加している全員が負っているように見えた.
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