Derm.2002
いぼ剥ぎ(掘り)ダコ
江川 清文
1
1熊本大学医学部皮膚科教室
pp.89
発行日 2002年4月10日
Published Date 2002/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412903935
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私の右手第1指末節の背面外側寄り,爪の生え際とIP関節のちょうど真ん中あたりには,小さな結節がある.大豆の大きさと形で,ころっとした感じが何ともいえない.痛くも痒くもない.どころか,他の指で撫ると心地よく,何となく気持ちが和んでくる.表面はやや光沢を帯びて,少し薄れかけてはいるが紋理はまだ残っている.じっと見ていると,さまざまのことが思われて,飽きることがない.こんな小さな皮膚の変化が,過去や未来,思い出や夢,時々の出来事,考え方や生き方,決意,心の在り様にまでつながっていたり,それに勇気づけられたりするのは,なんとも不思議ではある.
節くれだった手やひび割れた手,まめだらけの足,肘の傷痕,全身の小腫瘤.ややもすると,治療の対象とのみとらえがちなこれらの変化も,あるときは,人によっては,生産の喜びであったり,生きる支え,達成の喜び,人と人との絆,人生そのものであったりすることもある.それぞれにそれぞれの,自然科学的アプローチだけでは済まない,成り立ちの理由や意味や背景がある.
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