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アスピリン蕁麻疹は奇妙な蕁麻疹である.通常は多種類の酸性系消炎鎮痛剤によって惹起されるが,これらに対するスクラッチテストや皮内テストでは陽性所見は得られない.またその誘発までの時間は数十分から7〜8時間までと様々である.IgE-抗原複合体などによる肥満細胞による脱顆粒が酸性系消炎鎮痛剤によって増強されるのではないかとの仮説のもとに当教室の原田晋先生らと臨床的検索を行ってきた.現在のところ食餌依存性運動誘発性アナフィラキシー患者においてアスピリン摂取後にIgE-RAST陽性の一部の食物を摂取すると蕁麻疹やアナフィラキシーが誘発されるが,食物あるいはアスピリンのみでは誘発されないということがわかってきた.
このアスピリン負荷テストを行っている間に様々なタイプの皮膚症状が誘発されることに気がついた.最も多いのは蕁麻疹タイプであるが,この他に血管神経浮腫や小紅斑がみられることもある.また蕁麻疹タイプでは頻繁に手掌,足蹠,被髪頭部に皮疹がみられることに気がついた.このため蕁麻疹患者を診察したら必ず「手のひら,足の裏に皮膚症状が出ませんか?」と尋ねるようになった.その後掌蹠に症状があり,アスピリン負荷テスト陽性になる症例を続けて経験したため「アスピリン蕁麻疹では掌蹠に症状が出るのではないか」と思った時期もあったが,しばらくしてから掌蹠に症状があるにもかかわらずアスピリン負荷で出ない症例も経験したため,必ずしもこれが正しいわけではないと考えるようになった.しかし,このアスピリン負荷で掌蹠や被髪頭部に症状が出ることが多いのはまちがいないと今も信じている.このため今も蕁麻疹患者を診察したら「痛み止めや解熱剤で蕁麻疹はひどくなりませんか? 手のひら,足の裏,頭の中に皮膚症状が出ませんか?」と尋ねている.
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