マイオピニオン
退官して徒然に思うことなど
錦織 千佳子
1,2
Chikako NISHIGORI
1,2
1兵庫県赤十字血液センター
2神戸大学
pp.892-893
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412207429
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1. 大学にいる間はあまり物事を考えてこなかった
2022年から兵庫県赤十字血液センターで所長職を拝命している.献血していただいた血液からGMP基準の血液製剤の製造と販売,という一連の業務を所掌しているところである.皮膚科でも血漿交換やIVIGをはじめ血液製剤のお世話になったが,恥ずかしながら,それが善意の献血者に支えられて投与できているということにあまり思いを致さず,オーダーすればできるのが当たり前……という感覚であった自分を大いに反省しているところである.
このように,皮膚科を少し離れて,一医師として俯瞰すると,自分の周りのこと以外はあまりよく知らないままこの年まで生きてきたんだな……と,今更ながら自省する毎日である.大学に勤めているころは,ひたすら忙しく,目前の仕事を片付けることに追われ,あまり深く考えるということはせずに,ただただ業務をこなしていた感じで,不義理なことも度々あったと思う.私はマイペースでゆっくりと考えながら物事を進めたいタイプなので,いつも,どこかに大事なものを置き忘れてきたような気がしながら毎日を過ごしてきた.今思っても誠に非人間的な生活であったと思う.深く考えなくても,問題なく事が回っていけば良いのだが,流れに任せているうちに,無意識のうちに重大な間違いに加担してしまうようなことがあったら怖いな〜と思う.
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