Derm.2024
震災を経験して
前田 進太郎
1
1金沢大学医薬保健研究域医学系皮膚分子病態学
pp.16
発行日 2024年4月10日
Published Date 2024/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412207257
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令和6年元旦,多くの人にとって1年で最も平穏な一日…が,16時10分に起きた,巨大な地震によって覆りました.部屋が歪むのが肉眼でもわかるほどの揺れ,あまりの激しさに生命の危険がよぎりました.それでも大学病院のある金沢市は震度5強でしたので,震度7だった地域は想像を絶する恐怖だったろうと思います.ニュースを見ると,外勤で10年以上通い続けて慣れ親しんだ奥能登地方が,崩れ,焼け落ちています.にわかには現実として受け止められないほどの衝撃でした.
幸い,医局員は皆無事でしたし,大学病院や医局には大きな損壊はありませんでした.地震の翌日になると当院にも被災地から次々と患者が搬送され,救急外来は患者とDMATでごった返すという,テレビでしか見たことのなかった光景が目の前で繰り広げられていました.皮膚科も被災地からの感染症や熱傷などの患者を受け入れましたが,病気が良くなっても帰る家がないのです.県内の病院はどこも被災地からの患者を受け入れている上,コロナ・インフルエンザの蔓延も重なって,転院もできない状態がしばらく続きました.長い長い1か月でしたが,2月に入ると病院の状況はずいぶん落ち着いて,大学病院はほぼ通常営業に戻っています.しかし,奥能登地方はインフラが不十分なのと人手不足が相まって,病院機能の回復にはまだ時間がかかりそうな状況です.
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