第28回日本公衆衛生学会総会シンポジウム
2.森永砒素ミルク中毒の場合
吉田 健男
1
1岡山大学医学部衛生学教室
pp.8-13
発行日 1971年7月10日
Published Date 1971/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204937
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吉田 昨年の本学会で阪大の丸山教授らから「14年目の訪問」という形で森永砒素ミルク被災児は後遺症の問題を初め社会医学上重要な問題をいまなお残しているという問題提起がなされました。その後1年間,行政の対応,企業の対応,および医学にたずさわる者の対応はいかなる問題点を有していたのでしょうか。当時森永砒素ミルク中毒児の治療および治癒判定に関与した浜本元岡大小児科教授は「このような事件が二度と起ころうとはだれも考えないであろう」という願望を述べておりますけれども,大規模の食品公害は,その後もすでに報告されたように,発生している。しかもその後の経過は,森永砒素ミルク中毒の場合の反省が生かされない形で対応されている。
14年間放置した反省の上にたって,被災児の健康障害を含む社会医学的問題点の解明とその対策,即ち治療,養護,教育という基本的問題を考えていく上で,なぜ後遺症を初め社会医学上の問題が大きく残されたまま放置されなければならなかったかを検討する必要があろう。
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