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文献紹介 黄色ブドウ球菌由来のPSMαはIL-17依存性の皮膚炎を誘発する
齋藤 苑子
1
1慶應義塾大学
pp.975
発行日 2018年11月1日
Published Date 2018/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205569
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黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:SA)はアトピー性皮膚炎患者の90%以上において病変部の皮膚に定着が認められるが,どのように皮膚炎に関与するのかについての詳細は不明な点も多い.著者らのグループは,これまでの研究で表皮感染マウスモデルを用いて,SAの産生するδ毒素が,肥満細胞の脱顆粒を介してアレルギー型の皮膚炎を惹起することを報告している.本研究では,同様にSAの表皮感染マウスモデルを用いて,SAの産生するPSMαという外毒素が表皮のケラチノサイトに働きかけ,IL-1αやIL-36αの分泌を介してIL-17依存性に皮膚炎を惹起することを示した.
IL-1の下流のアダプター蛋白であるMyd88を全身でノックアウトしたマウス,および,皮膚ケラチノサイト特異的にノックアウトしたマウス,抗IL-36受容体抗体を投与したIL-1受容体ノックアウトマウスにおいてはコントロール群に比べて有意に皮膚炎が抑制され,病理所見で表皮肥厚の抑制や好中球の浸潤も抑制された.また,野生型マウス由来のケラチノサイトの細胞をSA由来の培養上清で刺激するとIL-1αやIL-36αの放出がみられるが,Myd88ノックアウトマウス由来のケラチノサイトでは抑制された.さらに,PSMα欠損株のSA培養上清により刺激した場合には,IL-1αやIL-36αの放出がみられなかった.皮膚炎の病変部において,Myd88をノックアウトしたマウス由来の細胞では,野生型に比べて有意にIL-17産生細胞の数が減少していた.
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