"なぜ診断できないか"を科学する・4
"黄色ブドウ球菌性""心内膜炎"に強くなれ
江村 正
1,2
1佐賀医科大学総合診療部
2ミシガン州立大学家庭医学科
pp.345
発行日 2002年4月15日
Published Date 2002/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903511
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前号で,一般的に,細菌感染症では侵されている部位(通常1ヵ所)の症状が強く,ウイルス感染症ではさまざまな症状を伴う,と述べた.しかし,この原則に当てはまらない場合,すなわち細菌感染症で,さまざまな症状を呈する場合は危機的である.その1つの例として,感染性心内膜炎(IE)があげられる.
IEでは,当初は原発巣そのものによる自覚症状はほとんどない.感染症一般にみられる症状(発熱・全身倦怠感・体重減少など)と弁膜破壊による症状(心雑音・不整脈),および血行性に菌が播種された結果生じる症状(膿瘍・Osler結節・脳梗塞・肺梗塞など)が病像を形成する.したがって,さまざまな部位の症状を有する患者で,その症状が多発性膿瘍によるものと考えられる場合は,IEを疑って急いで血液培養を行う必要がある.このように強くIEを疑っているような状況では,心雑音が明らかでないことや,経胸壁心エコーでvegetationがないことで, IEを否定してしまうのはきわめて危険である.なぜなら,経胸壁心エコーの感度はせいぜい60~80%だからである1).経食道心エコーは感度が90%といわれているので,IEを疑っている場合には,必ずオーダーして欲しい.
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