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はじめに
わが国のお産は,第二次世界大戦直後までは,そのほとんどが自宅分娩であった.そして,戦後の復興の歴史と共にお産の場所は施設へと移行し,現在は99.8%が施設分娩である.その分娩施設が,この10年「お産難民」とまで表現されたように,とりわけ病院の集約化がされたことは周知の事実である(図1).集約化に至る背景としては,臨床研修医制度の開始と同時期であったが,産科医師の24時間365日休みなしの過激な勤務体制,医療訴訟の多さ等,産科医師への魅力の軽減があった.それらの問題解決のためには,医師養成力の強化と共に,働き方の見直しが求められた.施設数を少なくし,機能別強化を図り,産科医の1人配置を複数配置にする流れになっていった.
平成20年には,厚生労働省が『安心と希望の医療確保ビジョン』(表1)を示し,限りある医療資源の有効活用を国として方向付けたことが大きい.とりわけ助産師については,明治時代からの産婆規則にはじまり,保健師助産師看護師法においても,助産に関わる業務と権限が認められていることから見えやすいこともあり,積極的な議論が開始された.
筆者らが日本看護協会助産師職能を中心として,助産師を積極的に活用する院内助産システムを提言してから数年が経過した.この間,大きく前進したのは,主任研究者/東北大学岡村州博教授の平成18~20年厚生労働科学研究「分娩拠点病院の創設と産科2次医療圏の設定による産科医師集中化モデル事業」1)に助産師活用班として参加し,産科医師・助産師間のチーム医療のあり方を検討する機会を得たことである.前述の『安心と希望の医療確保ビジョン』が,20・21年度に「院内助産所・助産師外来整備」ならびに「開設のための医療機関管理者および助産師研修事業」として厚生労働省医政局に予算化されたことが,本システムの周知ならびに開設増加に拍車をかけたと思われる.
しかしながら,産科医師数の不足が,本システムを後押ししたように受け取られるのは不本意である.
「健やか親子21」2)に見られるように,わが国の母子保健は世界最高水準にあるにもかかわらず,親子の心の問題,救急医療のあり方など,新たな課題が生じていた.お産という人生の大きなイベントをもっと人間らしく体験し,子どもを持つことの意味やすばらしさ,その後に続く育児を有意義なものにするために,お産を位置づけることを利用者である妊産婦や家族が求めていたことなどが,本システムが,新しい産科医療体制に組み込まれた理由であり,その結果,助産師の活用が望まれたと考えている.
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