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尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris:PV)はデスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体によりケラチノサイト同士の細胞間接着が障害され,表皮や粘膜上皮に水疱を形成する自己免疫疾患である.以前にPV患者で病原性を発揮するモノクローナル抗体として,Dsg3分子のEC1サブドメイン間のtrans結合を障害するAK23が報告されている.今回,Dsg3分子のEC1-EC2サブドメイン間の結合であるcis結合を障害するモノクローナル抗体が病原性を有し,さらにほとんどのPV患者がcis結合部位に結合とする抗体を持つことが示された.
PV患者から分離したモノクローナル抗体PVA224は,in vitroおよびマウスを使用したin vivo実験で病原性を認め,Dsg3のEC1~5とDsg2のキメラ蛋白を用いたcompetition assayでEC1に特異的に結合することが示された.C-カドヘリンをモデルとしてDsg3の立体モデルを作成し,PEPSCAN systemを用いると,PVA224はEC1上のcis結合に携わる部分に結合し,それはAK23とは異なる部位であることが推定された.PV患者血清とPVA224がエピトープを共有しているかを調べた実験では,10人のPV患者全員の血清がPVA224のDsg3への結合を80%以上阻害した.逆にPVA224は,10人のPV患者血清中4人でDsg3への結合を80%程度阻害した.さらにVH領域とVL領域をgermline化させると,モノクローナル抗体のDsg3との結合が失われることから,VH領域の変異が大きく抗体の抗原特異性および病原性に関わっていることが示唆された.
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