--------------------
文献紹介 神経ストレスにより誘導されるヒストンのリン酸化修飾が単純ヘルペスウイルス再活性化に関与する
川島 裕平
1
1慶應義塾大学
pp.865
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204901
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)は,生涯にわたり宿主の末梢神経に潜伏感染している.さまざまなストレス刺激によりHSV再活性化が生じるが,その詳しいメカニズムはわかっていない.本論文は,ストレス刺激により活性化されるJNK(c-Jun N-terminal kinase)シグナルが,神経細胞におけるHSV再活性化において重要であることを明らかにした.
著者らは,マウスの上頸神経節より採取した神経の初代培養細胞をHSVに感染させた後,アシクロビルで処理することにより,潜伏感染状態をin vitroで解析できる系を確立した.ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤投与によりウイルス再活性化が誘導され,ウイルスが活性化した際に発現するVP-16蛋白を発現する細胞の増加がみられた.ウイルス再活性化は,JNKシグナル伝達の下流にあるc-Junのリン酸化を伴った.JNKシグナルを阻害するとPI3K阻害に応答したウイルス再活性化が阻止された.また,ウイルス再活性化には,神経障害時にJNKシグナル伝達を起こすDLKとJIP-3が必要であった.以上より,JNKシグナル活性化がHSV再活性化に関与していることが示された.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.