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代表的な非黒色腫皮膚悪性腫瘍である基底細胞癌や有棘細胞癌は紫外線が主な原因となる頻度の高い悪性腫瘍である.ニコチン酸アミドは紫外線によって生じる細胞損傷に対する保護作用を有し,日光角化症の発生率を低下させることが過去に示されている.筆者らは,第3相二重盲検無作為化比較試験にて過去5年間に少なくとも2つ以上の基底細胞癌・有棘細胞癌の既往を有する386例の被験者をニコチン酸アミド投与群(500mg 2回/日)とプラセボ投与群に1:1で無作為に振り分け評価した.薬剤投与期間は12か月としその後6か月の観察期間を設けた.この18か月間に被験者は皮膚科医の診察を3か月ごとに受けた.主要評価項目は薬剤投与期間(12か月)における基底細胞癌および有棘細胞癌の新規発生総数で,副次的項目として薬剤投与期間の有棘細胞癌・基底細胞癌の各々の新規発生数,日光角化症の数,薬剤投与終了後6か月の観察期間における非黒色腫皮膚悪性腫瘍の新規発生数,そして副作用を評価した.
皮膚悪性腫瘍の発生率は12か月の時点でニコチン酸アミド群がプラセボ群に比し23%〔95%信頼区間[CI]4〜38(p=0.02)〕,基底細胞癌の発生率は20%([95% CI-6〜39], p=0.12),有棘細胞癌の発生率は30%([95% CI 0〜51], p=0.05)各々低下していた.日光角化症の数も12か月の介入期間中,3か月目で11%(p=0.01),6か月目で14%(p<0.001),9か月目で20%減少(p<0.001),12か月目の時点で13%減少(p=0.001)していた.ニコチン酸アミドの中止後は皮膚悪性腫瘍発症率低下の有意差はなくなり,内服期間中の有効性が示唆された.ニコチン酸アミドの副作用の種類や数はプラセボ群と比べて大きな差はみられなかった.
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