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メラノーマは腫瘍周囲間質に浸潤する炎症細胞浸潤が多いほど予後が良い傾向がある.著者らはメラノーマ検体の発現遺伝子解析により,炎症浸潤細胞が多い症例では少ないものに比べてⅠ型インターフェロン(IFN)刺激に応答する遺伝子の発現が高いことを示した.このような炎症細胞浸潤が多い症例ではPD-1を阻害する治療を行うことでさらに延命効果が認められるが,少ない症例は予後が不良である上に抗腫瘍免疫を活性化させる方法もまだ見つかっていない.そこで,著者らはT細胞による免疫監視機構を逃れて炎症細胞浸潤の少ないメラノーマを発生するHgf-Cdk4R24Cマウスに発生したメラノーマを用いて抗腫瘍免疫がⅠ型IFNによって活性化するかを検討した.
Hgf-Cdk4R24Cに発生したメラノーマの周囲にⅠ型IFNの分泌を促進する合成dsDNAであるpoly(Ⅰ:C)を局注すると,Ⅰ型IFNに関わる遺伝子が発現するのとともに腫瘍細胞周囲の炎症細胞浸潤が増加し,マウスの生存期間も延長した.一方,Ⅰ型IFNを欠損したHgf-Cdk4R24Cにおいては予後の改善が認められなかった.続いて,Hgf-Cdk4R24Cより発生したメラノーマ細胞株HCmel3をRag-2がノックアウトされたC57BL/6マウスに移植するxenograftモデルで同様の検討を行った.通常のC57BL/6においてはpoly(Ⅰ:C)局注にて抗腫瘍効果が得られたが,Ⅰ型IFNを欠損したC57BL/6では予後の改善を認めなかった.さらに,マクロファージ,NK細胞,リンパ球などの各種免疫細胞特異的にⅠ型IFNが欠損したC57BL/6で行った検討でもそれぞれ治療効果が減弱した.以上の結果より,炎症細胞浸潤の乏しいメラノーマでも,免疫賦活性RNAを腫瘍周囲に局注することで樹状細胞,骨髄細胞,NK細胞,T細胞によってⅠ型IFNの分泌が増加し,腫瘍の増殖抑制が得られる可能性が示された.続いて,同様のxenograftモデルでpoly(Ⅰ:C)の局注と同時に抗腫瘍免疫を阻害する抗CD8抗体,抗NK1.1抗体,抗IFNγ抗体を投与した.いずれも治療効果が減弱し,抗IFNγ抗体群では治療効果が完全に消失した.逆に,poly(Ⅰ:C)と抗PD-1抗体をともに投与した際には,poly(Ⅰ:C)単独治療のときよりもより長い延命効果が得られた.
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