- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
PhiladelphiaにあるPennsylva—nia大学のKligman教授の研究室は,大学構内から少し離れたところに,2つの建物にわかれている.1つは大学とは無関係の彼個人の財団の研究室で,研究は器械でするのではない,頭でするものだとの彼の持論を裏付ける如く,特別な研究設備,器械などはなく,近代的絵画がかかつている,展示場かオフィスのような部屋で,簡単な装置を使つて経皮吸収や皮膚の生理の実験が行なわれているようだつた.その一室でドイツから来ているあるDrが,プロピレングリコール単独のパッチテストは陽性で,スコッチテープのストリッピング後は陰性であるとのデーターを話してくれた.私が数年前に行なつた実験とは全く逆で大分議論をした.この後で訪れた他の研究室でもそうであるが,向うの連中は必ず,お前は何に興味があるかと聞ぎ,自分はこういうことをやつていて,こういうデーターを持つている,とスライドや標本なども見せて,とうとうとしやべり出す.お互いが噛みあわないときはどうにもならないが,こちらもスライドなどを用意して,得意なところを少し見せておかないと,聞かされつぱなしで馬鹿みたいである.ここには,有能な黒人の事務長がいて,2つの研究室の事務的なこと,人事問題,対外折衝など一切を切りもりしているとのこと,アメリカの能率のよさの一端でもあろう.
もう1つの研究室は通りをへだてた向かいにあり,初代教授の名を冠してDuhring Laboratoriesと呼ばれ,せまい廊下には古い皮膚病図譜,全員シルクハット姿の古い学会の記念写真,またKligman教授のはだかの油絵(前の夫人が描いたという)などがたくさんかかつていた.それでもこちらの研究室の方は動物室や,細菌培養室などがあつて,かなり実験室らしいふん囲気であつた.オーダーを出すと数時間のうちに,希望通りの性別,人種,年齢,部位のヒトの皮膚の乾燥保存したものが届けられるとのこと,大したものである.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.