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湿疹という病名のつけられる皮膚病変は少なくないが,その本態はよく判かつていないし,また,湿疹というものに対する考え方も一定していない。いまここで湿疹の定義,概念については論じないが,一般には,瘙痒のある紅斑,丘疹,小水疱,膿疱,びらん,結痂,落屑という多彩な病像を呈する皮膚病変を湿疹と呼んでいる。この湿疹性の病変に対して,副腎皮質ホルモン剤の内用,外用が有効ではあるが,湿疹の治療は必ずしも容易ではない。
湿疹は一種のアレルギー性疾患であるというところから,抗ヒスタミン剤を使うものもあるが,副作用としての眠気がいくらか効いたような印象を与えることはあつても,蕁麻疹に対するほどはつきりとした効果の見られることはまずないといつてよい(ただし,アトピー皮膚炎には多少効くことがあるように思われる)。宮沢1)は実験的にアレルギー性接触皮膚炎において,一度抗体が作られると,抗ヒスタミン剤はもはや皮膚炎の発生を抑制し得ないことを述べ,その他のchemical mediatorについても,それらが接触皮膚炎の発生因子とはならないが,蛋白分解酵素(Pronase-P)を加えて生ずるアレルギー性水銀皮膚炎の発生を,抗ブラジキニン剤homochlorcyclizineが抑制し,ブラジキニンが接触アレルギーにある程度関与している可能性を述べている。また,宮沢,熊坂2)は実験的DNCBアレルギー性接触皮膚炎に対して,diphenhydramine,homochlorcylizineの両者とも,著明な抑制作用を示さないが,実験的サルヴルサンアレルギー(一種の遅延アレルギー)に対しては,diphenhydramineで抑制効果が見られぬが,homochlorcylizineでは著明な抑制効果が見られたことを報告している。
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