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I.緒言
近年漸増する傾向にある尋常性乾癬の発生病理に就ては,まだまだ解明されていないことが多い。我々は,併しながら,この点に関して数年来の研究1)2)3)を通じて,一応,次のような見解を有するに至つた。すなわち血管炎に原発する皮膚血管反応の繰り返しが,乳頭体毛細血管係蹄の延長,屈曲を含む新生,内腔の拡張等の本症に特異的とされている血管変化を来し,それとともに増大する血流により,表皮には特徴的皮膚細胞の増殖(アカントーゼ),表皮代謝の異常(例えばDNA—代謝の転換率の促進),諸酵素(例えばコハク酸脱水素酸素,Tran-saminase, Tripeptidase等)活性の上昇,鱗屑水溶成分の異常(可溶性蛋白,SH-蛋白,五炭糖,Uracilの上昇,遊離アミノ窒素の減少,ヘキソースアミンの増加)等がおこると解される。血管炎の発生要因として,第1に,咽頭病巣その他の病巣の細菌性多糖類(あるいは,それに類似する皮膚酸性ムコ多糖類)によるアレルギー反応toxische Wirkung又は,逆に血管側のIntoleranz Reaktionが考えられ4),そして所謂Kobner現象あるいは,本症に認められる血管系の異常反応は,繰り返しておこる皮膚血管反応の結果,血管が非特異的に反応するに至つたと解釈したい。従つて,本症の治療に関しても次のような諸点の改善が望ましいと思われる。
①咽頭その他,病巣感染の抑制:急性経過をとつて発症,あるいは,尋常性乾癬例で悪化,しばしば高いASLO,ASta値を示す滴状乾癬では,抗生物質の使用は時に有効であるが(Korting)5)併し,慢性傾向の強い尋常性乾癬の定型疹では,この治療は効を奏しない。
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