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パッチテストは,できるだけ正しい結果を出すために,さまざまな工夫が必要であると思われる.パッチテストでは,偽陽性反応がみられることがあり,特に金属である亜鉛,マンガンなどで認められやすい.当教室では,以前は2%塩化亜鉛の試薬を用いてパッチテストを行っていたが,典型的な刺激反応である毛包一致性丘疹や膿疱の所見を認めたり,また炎症が強いために紅斑を伴ったり,翌日に反応がさらに増強したりして,アレルギー反応と紛らわしいことが少なくなかった.そこで,1%塩化亜鉛や1%硫酸亜鉛の試薬に変更したところ,刺激反応の頻度は著しく減少した.また,当科では48時間後,72時間後だけでなく,1週間後にもできるだけ判定を行うようにしている.フラジオマイシンなどの抗生物質や,ウルシやイチョウなどの植物は72時間後以降に反応のピークがみられることが少なくなく,1週間後に判定することは有用である.このように,パッチテスト試薬の貼付濃度や種類,判定時期を工夫することで,よりよいパッチテスト診療を行うことができると思われる.
パッチテストにより原因を解明できれば,ステロイド剤外用により軽快しなかったり,再燃を繰り返す湿疹を寛解に導くことができる.そのためには日頃から学会発表や論文などを通して,どのような湿疹をみたときに接触皮膚炎を疑うのか,何が原因の候補として考えられるのかを勉強し,知識を深めておく必要がある.また,ステロイド剤外用などの通常の治療により軽快しないアトピー性皮膚炎の症例でパッチテストを行うと,一部の患者ではステロイド剤や抗生剤,化粧品,染毛剤の接触皮膚炎を合併していることがあり,難治性の湿疹の症例にはパッチテストは非常に有用であると思われる.これからも日々鍛錬して接触皮膚炎の知識や情報を得て,パッチテストを通して少しでも多くの接触アレルギーを見つけ,難治性の湿疹で困っている患者を寛解に導きたい.
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