Derm. 2004
金属パッチテスト
安部 正敏
1
1群馬大学大学院医学系研究科皮膚病態学
pp.117
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100682
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誰もいない! いつも満員を誇る関連病院の朝の待合室.誤診だらけで口先医者の私なんぞでも慕ってくださる患者さんが多いのが嬉しい.しかし,ついにヤブ医者がバレたか? 溢れ出る涙をぐっと堪え診察室に入る.すると,呼んでもいない男がだしぬけに私の前に現れた.男は無言で黒色の手帳を見せる.えっ!? 誤認逮捕? 冤罪? 今朝の寝坊によるスピード違反なら,現行犯逮捕のはずだが…?
「実は先生に診ていただきたい者がおります.」なんだそんなことか! 全身の力が抜ける.しかしこの後,この刑事は恐ろしいことを言い出した.「これから診ていただく男は数回の逮捕歴をもつ凶悪犯です.拘留のたびになにかと病院にかかりたがります.われわれも無視できず受診させますが,この男はやれ検査だ! 処置だ! と要求します.しかし,検査の結果に不満だったり,病気が治らないと出所後その病院に対しお礼参りをします.また,拘留が原因で病気になったなどと医師から言われますと警察内でも派手に暴れまわりますから検査や処置は絶対に止めて下さい.そして警察の責任を匂わせないように! 病気の説明も大雑把にして,原因を言わないこと.治療は副作用がなく,絶対治る薬を….」 そんならオマエが診ろ! と言いたいが,私とて国家権力に反抗できぬ気弱な小市民である.刑事が去った.今にも逃げ出しそうな若き女性看護師をリラックスさせるべく,「電球スタンドと土瓶に茶碗.あとカツ丼を用意して」などと言うと,血相を変えた刑事が戻ってきた.冗談が通じないのか?
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