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1.はじめに
2015年にready-to-useのパッチテスト試薬が発売された.私がまだ大学院を卒業したばかりで,重症熱傷や菌状息肉症,薬疹に水疱症などの患者さんの処置と並行してパッチテストの準備をしていたときに,ある後輩が「パッとそのまま貼れば良い試薬があるといいなあ」とつぶやいていたことを思い出す.すでに海外ではT.R.U.E. test®が発売されていた.その後,ready-to-useの試薬についてどのように考えるかというアンケートがきた.当時,私は「反対」意見を記載したと記憶する.刺激がある試薬を希釈して貼れない,再検をしたいアレルゲンだけを選んで貼れない,重要なアレルゲンは場所を変えて2か所貼りたい,すでに強陽性を示すことが判明しているアレルゲンは除いて貼りたい,などの理由を書き連ねたように思う.当時はまだJapanese standard allergens(JSA)の威力には気がついていなかった.しかし,テスト前に時間をかけて丁寧に問診しても気がつけなかったにもかかわらず,JSAの結果から予想外の原因にすんなりとたどり着けたという事例を経験し,一般的な皮膚科診療におけるJSAの有益性に気がついた.製品のパッチテストが陰性でもJSAのお陰で原因を見逃さずに済むということも実感するようになった.国内の接触皮膚炎診療の状況を知るようになって,接触皮膚炎診療に必須のパッチテストが実は普及していないこと,日本人のためのJSAにもかかわらず日本で入手し難く,JSAを活用する皮膚科医はさらに少数派であることは非常に問題であると感じるようになった.時間をかけて患者の持参品を削って,練って,砕いて,切って,希釈して,漸く貼ったのに,原因がわからなければ,患者さんも皮膚科医もがっかりである.現在ではJSAを貼らないパッチテストは考えにくい.
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