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皮膚科に限らずすべての臨床医にとって,眼に飛び込んでくる皮疹には,実は膨大な情報が隠されている.これは,検査と異なり,労せずして手に入るため,他科の医師からは軽視されがちであるが,皮膚科医にとっては,診断における最大の立脚点であり,さらに,皮疹の陰に隠れている重大な全身疾患を見出す貴重な手掛かりにもなっている.言い換えると,皮疹は,確かに皮膚における病態の表現型であるが,同時に,皮膚単独とは限らない内臓を映す鏡でもある.かつて,西山茂夫教授は,皮膚科において,狭義の皮膚疾患というものは意外に少なく,全身との兼ね合いのもとに現れる皮膚病変とでも称すべきものが大部分であると喝破した.たとえば,結節性紅斑なる病名は,Behçet病,サルコイドーシス,結核,薬疹などにより引き起こされる症状名として扱うべきものであり,原因不明の本態性と称される名称は,本来,抹殺すべきものなのである.
今回,「皮膚科臨床アセット」シリーズのテーマとしてまとめられた紅斑や痒疹は,いずれも皮疹を基盤とする古典的概念であるが,どちらかというと,記載皮膚科学的疾患群であり,病因,病態分析,および治療面の対応は,必ずしも劇的に進んできたとは言い難い領域でもあった.したがって,これらの2つは,いわゆるトピックスとして,まとめられる機会も少なく,しかも,疾患群としては,病名も患者数も意外に多い分野である.一方で,膠原病や薬疹,さらには中條-西村症候群のように遺伝子異常が解明された稀少疾患など,近年,病態の解明に伴う皮疹の理解が,急速に解明された部分もあり,紅斑,痒疹については,古典的病名の是非も含め,新しい眼で見直す必要がある.あらゆる皮疹は,適切に把握され,そして病態・治療と結びつけられるべき概念なのである.
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