おかしな検査データ
検鏡・培養検査所見の不一致の背景
播金 収
1
1奈良医科大学病院中央臨床検査部
pp.244-245
発行日 1981年3月1日
Published Date 1981/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202238
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臨床細菌検査を行うなかで,どんなに考えても理屈に合わない検査データが出ることがある.例えば,検鏡で細菌を認めるが,培養では菌の増殖を認めない,といった単純なものから,培養所見でStreptococcus pneumoniaeが105以上の菌量で存在し,しかも多核白血球が喀痰中に無数に存在しているような患者でありながら,肺炎症状が全く認められず,本人は,至極元気でいるような,むしろ多少難解な臨床医家向けの解釈を迫られるような内容のものまで,多種多様であり,その幅広い"おかしな検査データ"の生ずる要因も,また複雑に交り合っている.こうした観点から,"おかしな検査データ"の生ずる基本的な背景とその内容及び解決法について,紙面の許す範囲で記述したい.
頻発する"おかしな検査データ"は,臨床細菌検査の原則の無視により惹起される.すなわち,化学療法剤使用中の検査材料を,そのまま検査に供したときである.基本的なことでありながら,案外守られにくい.特に臨床医家と十分にコンタクトの持てない病院で起こるケースであるが,当初述べたように,検鏡の結果と培養の結果が一致しない場合である.抗生物質の存在のため,当然発育する細菌が発育せず,抑制されたり静菌化したりする,これらの成績からは結果を評価することはとても無理である.したがって検査実施前,最低24時間,場合によっては48時間の休薬がほしいところである.
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