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Q.検鏡の際,コンデンサーを上げる? それとも下げる?
検鏡時,尿沈渣などの立体物ではコンデンサーを下げ,塗抹標本などの平面的なものではコンデンサーを上げて観察すると教わりました.しかし,最近コンデンサーを下げて撮影したと思われる血液像を見かけます.血液像の検鏡時にはコンデンサーを下げる傾向があるのでしょうか.もし下げる傾向があるならばそのメリットを教えてください.(佐渡市 K.Y.生)
A.久保田光博
はじめに
光学生物顕微鏡(以下,顕微鏡)は臨床検査や病理診断(細胞診断,組織診断)に携わる者にとって,大切な仕事道具(いわば必需品)です.これは臨床医が肌身から離さない聴診器とまったく同じです.われわれは以前に比べるとはるかに高級なシステムを内蔵した顕微鏡を使用していますが,著しい光学系技術革新の賜物にほかなりません.したがって,顕微鏡を用いた診断業務に従事している者は,その基本操作を正確に理解し,その性能をフルに活用できなければなりません.これは検鏡により得られた情報を臨床側に伝達することを使命としている以上,当然の帰結といえます.
今回の質問はコンデンサーの実践的な使用法に関するものです.結論から申し上げると,血液像を観察する際にはコンデンサーを上げることもあれば,下げることもあります.すなわち絶対的な使用規定は存在せず,臨機に対応しているのが現状です.検鏡時,好んでコンデンサーを調整する方もいれば,そうでない方もいます.観察したいもの〔血液像であれば,核の形態や核クロマチンの性状,胞体内顆粒やアウエル小体(Auer body)などの特殊構造物の有無〕を“より見やすくする”ための手段として,コンデンサー上下動ハンドルを操作したり,開口絞り環を開放したり,絞ったりしています.これは検体や染色の種類を問いません.また顕微鏡写真撮影の際には,撮影者はコンデンサーの上下移動よりも,むしろ開口絞り環の操作に細心の注意を払う必要があります.それは写真の良否に直接関与するからです.
以下,専門用語を整理しながら,コンデンサーの基本的操作について実践的に解説します.なお,近年の写真システムは銀塩からデジタルへと予想をはるかに超えるスピードで置き換えられつつあります.この点を配慮し,本稿ではデジタルカメラで撮影した写真のみを掲載しました.
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