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文献紹介 ニッチによって誘導される細胞死と上皮細胞による貪食作用が毛包の幹細胞プールを調節する
澤田 美穂
1
1慶應義塾大学
pp.421
発行日 2016年5月1日
Published Date 2016/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204792
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組織の恒常性は,細胞の産生と除去のバランスにより維持される.組織の増殖とは対照的に,退縮に必要となる細胞や分子シグナルに関してはよくわかっていない.今回,著者らはマウスの毛包組織を利用して,組織の生理的な退縮がどのようにして起こるかを調べた.
一般的に毛包は組織の再生を継続するために,幹細胞プールを維持しながら成長期と退縮期のサイクルを繰り返している.生体顕微鏡を用いた実験で,退縮期における毛包上皮細胞の除去は主に2つの機序,すなわち基底細胞より上層の細胞の分化促進と基底細胞のアポトーシスに空間的な勾配をつけることによって行われることが示された.さらに,基底層の上皮細胞は周囲の死細胞を貪食することが示された.そして,分子生物学的手法を用いた解析によって,上皮細胞の細胞死がTGF-βの活性化と間葉系とのクロストークを介して外因性に誘導されることが示された.退縮を抑制すると再性能を有する基底層の上皮細胞の数が過剰になってしまうことから,退縮によって幹細胞プールを減少させていることが示唆されたことは興味深い.
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