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日本の皮膚科治療は欧米はおろか,東南アジア諸国よりも劣っているが1),このことを日本の皮膚科医は知らない.あるいは知っていても利益相反(conflict of interest:COI)があるため,黙っているのかもしれない.その最たるものが尋常性乾癬治療で,チガソンは1990年代にWHOが使うべき薬でないと勧告が出された薬剤で,日本以外の国では使用していない(海外では半減期が短いacitretinを使用している).またシクロスポリンを乾癬に使用しているのは日本ぐらいで,乾癬に対する内服薬の第一選択はメトトレキサート(MTX)である.実際私はJICAの依頼でバンコクにて皮膚科の先生に講義をしているが,そのときにアラブ首長国連邦(UEA)から来ていた女性医師から「シクロスポリンは乾癬に効果があるが,使用を中止するとすぐに再燃する.さらに副作用も多く,数年するとシクロスポリン腎症になり,透析も受けなければならない患者も出てくる.さらに薬の値段も高い.MTXがあるのに,どうしてそのような薬を使用するのか?」と言われ困ったことがある.そのため,ことあるたびにMTXの保険適用を日本皮膚科学会に提言しているが(日本リウマチ学会はとっくにMTXの保険適用の申請をし,現在MTXは関節リウマチに保険適用がある),学会が行ったのは医療費の高騰を招く生物製剤の保険適用である.米国でもシクロスポリンを乾癬に使用することはないが,使用するにしても副作用の発現を抑えるため,その使用は1年以内とされている.これが世界の常識である.ところがこの常識が日本では通用せず,むしろ最近になって薬物動態に合わせたシクロスポリンの投与法のガイドラインまで作成し,さらなるシクロスポリンの宣伝が行われている.乾癬友の会の患者に世界標準治療を隠しながら間違った治療をしているのであれば,乾癬ビジネスの謗りを免れない.
このようにわが国の皮膚科治療は問題が多いのにもかかわらず,日本皮膚科学会は治療のガイドラインを公表し,しかも英文化して世界に発信するという.確かに日本皮膚科学会のガイドラインには,優れたところも多いが,それは診断のところであり,本来の目的である治療が絡むとなると,問題があるものが少なくない.それは日本の皮膚科医の多くがEBM(evidence based medicine)を正しく理解していないからである.
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