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文献紹介 IVIgはCD22を介してBCRシグナルを調整し,ヒトB細胞のアポトーシスを誘導する
種本 紗枝
1
1慶應義塾大学
pp.968
発行日 2012年11月1日
Published Date 2012/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103471
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IVIgは川崎病,ギランバレー症候群,特発性血小板減少性紫斑病などの治療に使われているが,作用機序については詳細がわかっていない.B細胞にはB細胞レセプター(B-cell receptor:BCR)からのシグナルを制御するレセプター(例:CD22)が存在している.この論文ではヒトB細胞を用いてIVIgがBCRシグナルとB細胞アポトーシスにどのように関与しているかを検証している.
まず,リンパ腫細胞株,末梢血中B細胞,扁桃腺B細胞に,IVIgを加えて培養したところ,IVIgが濃度および時間依存的にB細胞のアポトーシスを引き起こすことが示唆された.さらに,IVIgをFITCで,CD22をTRITCで標識しB細胞上での局在を調べた実験では,B細胞上のCD22とIVIgの局在が一致しており,特にシアル酸修飾型のIgG syalated IVIg(IVIg SA+)が,CD22に作用してB細胞のアポトーシスを誘導していることが示唆された.また,B細胞を抗IgM抗体でコートされたビーズで活性化させ,IVIgと培養すると,BCRシグナル経路上の分子であるSHP-1の発現が誘導された.SHP-1はBCRからの活性化シグナル伝達分子であり,IVIgがCD22を介してSHP-1を誘導する機序が解明された.さらに,本論文ではIVIgが細胞周期(特にG1期)に関係するp38,ERK1,p27,caspase3/9のリン酸化を引き起こし,結果,B細胞のアポトーシスを誘導することが示されている.
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