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肝細胞増殖因子は肺癌細胞におけるアポトーシス誘導因子の下方調節を介してシスプラチン抵抗性を高める
鈴木 優治
1
1埼玉県立大学保健医療福祉学部
キーワード:
肺癌
,
肝細胞増殖因子
,
シスプラチン
Keyword:
肺癌
,
肝細胞増殖因子
,
シスプラチン
pp.850
発行日 2008年8月15日
Published Date 2008/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101681
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著者らはこれまでに肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor;HGF)がしばしば病巣組織において過剰発現し,HGFレベルが腫瘍ステージおよび予後の不良と正相関することを見いだした.HGFは上皮細胞および癌細胞の成長と移動を仲介する肺栄養因子であり,著者らの報告した結果はHGFが腫瘍増殖,侵潤,肺腺癌の進行に不可欠な役割を担っていることを示唆している.本研究では,アポトーシス誘導因子(apoptosis inducing factor;AIF)の遺伝子発現および肺腺癌細胞におけるシスプラチン感受性に及ぼすHGFの影響について検討した.AIFの発現は免疫組織化学および免疫蛍光顕微鏡を用いて測定した.HGFの添加はAIFの発現を抑制し,シスプラチン抵抗性を高めた.その影響はHGF受容体およびその下流の影響物質,FAK(focal adhesion kinase)を介してなされた.FAK遺伝子欠失はAIFの発現および薬剤感受性を高めた.一方,FAK遺伝子の再導入は薬剤抵抗性を回復させた.これらの結果はHGFがFAKの活性化およびAIF発現の下方調節をするためにc-Metを介してシスプラチン抵抗性を誘導する可能性を示している.
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