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私たちの学術活動の成果は,論文という形で,最終的に学術雑誌に報告される.現在の紙媒体での発表,報告の基礎はいつごろからあるのであろうか.紀元前3000年頃,エジプトにおいて書写材料として,パペルス革が使用されたが,このパペルスは,ペーパーである「紙」の語源となった.紀元前(179~176年)の前漢時代には,世界最古の紙が発見されている.1450年,グーテンベルグにより金属活版印刷が開発され,印刷技術の基礎が確立された.以来500年以上続いている,紙媒体による情報伝達方法が,今変わろうとしている.電子化の波である.論文の執筆方法に関しても,手書きの時代から,ワープロの時代へと変遷している.今では,誰もが当たり前のようにワープロを使用し,『臨床皮膚科』においても,手書き原稿の投稿を見ることはなくなった.すでに,海外雑誌の多くは電子化され,紙媒体と電子ジャーナルの二つの形を提供している.ただ,実際に私も含めて多くの人が,目的とする論文を検索により見つけたら,プリントアウトしてから,読んでいる.論文を読むという行為では,圧倒的に紙媒体のほうがよい.しかし,紙にできないことが,いくつかある.一つが動画であり,音声である.インタビューひとつにしても,表情,声のトーンなど,文字に落とせない情報は多々ある.ハリー・ポッターの魔法の世界では,アルバムの中の両親がほほえみ,手を振り,動いていた.細胞生物の領域では,ひとつの分子の細胞内動態がムービーで提供されている.細胞質内から核内へのある分子の移行など,ムービーは恐ろしく説得力がある.もう一つは,さまざまの質の違う情報を後ろに隠すことができ,必要に応じて引き出すことができる.クリックひとつで,皮疹の拡大像,全体像が見られたり,病理組織においても,スライドを自由に動かすことができ,弱拡大から強拡大まで自由に行き来し,しかも特染まで見ることができるようになるかもしれない.さて,20XX年の『臨床皮膚科』では,……….乞う,ご期待.
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