Derm. 2004
EmpiricistとNerd
小宮根 真弓
1
1東京大学医学部付属病院皮膚科
pp.64
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100677
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留学中のことである.‘皮膚科医にはnerdが多い'と昔から言われている,ということを聞いた.nerdとは,学問ばかりしていて実際に役に立たない人物のことだという.確かに学問には,学問のための学問という側面があって,現実の社会に役立つという点に無関心な部分がないとはいえない.特に皮膚科では知識ばかりはあるが実際に役に立たない医者が多いということであろうか.一方で,empiricistという言葉にも出会った.辞書を引くと,1)経験主義者,2)経験ばかりに頼るひと,3)やぶ医者,とある.医者にとって経験は非常に重要なものであるが,単にそればかりに頼っている医者はやぶ医者であるということだろうか.
学問と,臨床経験はともに医師にとって重要な,車の両輪のようなものである.どちらかに重心をおきすぎると,某国ではnerdとかempiricistとか言われてしまうのだろう.学問的背景があり,しかも実際に役立つ知識を蓄積し,そのバランスを保っていることは,実は非常に難しいことなのかもしれない.医学自体,もともとはempiricalなものであったのが,近代科学の進歩に伴い,科学的な背景を得て発展してきたように,医師個人としても,臨床経験に根ざした科学的知識の発展を目指すことは一つの大きな目標である.
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