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総務省の勧告を受けて,厚生労働省が,2013年5月29日に「添付文書の使用上の注意に自動車運転等の禁止等の記載がある医薬品を処方又は調剤する際は,医師又は薬剤師からの患者に対する注意喚起の説明を徹底させること」といった通知がなされたのは周知のことと思われる。この問題は学会や専門誌で議論となった4,9)。筆者はこれまで,諸外国と比べ,わが国では薬剤情報および患者提供情報は画一的記載が多く,運転などについて厳しい制限を科していることを指摘してきた5,6)。たとえば,わが国のほとんどの向精神薬は,「眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので,本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」と判で押したような文言でほぼ統一されている。一方,筆者が調べた限りでは,米国,英国,オーストラリアなどでは,同じ薬剤でも,わが国と比べ,詳細な薬剤情報が提供されている。たとえば「…プラセボと比べて,眠気に関しては,成人では,〇%…プラセボ対照比較試験では,眠気のために,成人の〇%,子どもの〇%が継続中断…患者は危険な機械操作(たとえば,自動車運転)は,〇〇の治療がそれらに悪影響がないことを確認するまで慎重にされるべきである」といったように,エビデンスを踏まえ,運転に著しい制限を科す表現はほとんど用いられていない。
薬剤情報にこのような問題はあるものの,現状でこの「注意喚起の説明を徹底」を患者に説明するには何に気を付けたら良いのだろうか。いくつかの試みもみられる3,8)が,少なくとも,患者向けにつくられた薬剤情報にあるように「眠気,注意力・集中力・反射能力などの低下が起こることがあるので,自動車の運転などの危険を伴う機械の操作は行わないようにしてください」とそのまま提示するやり方は議論の余地はない。なぜなら,それは患者に対して自動車などの運転に関して一部の情報提供しかしていないからである。少なくとも以下のような点は追加情報として検討すべきだろう。
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