トピックス 頭頸部癌—私の治療方針と成績(その3)
5.声帯癌T3症例の保存的治療
①北里大学病院の場合
中山 明仁
1
,
髙橋 廣臣
1
1北里大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.793-797
発行日 1998年11月20日
Published Date 1998/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901880
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
喉頭癌は頭頸部領域で最も予後の良好な癌である。今日では常識となったこの概念は先人の努力の積み重ねなくしては語ることができない。1854年に喉頭鏡が発見されたのを初めに,喉頭全摘術の開発,X線の発見,抗生物質の発見,頸部郭清術の開発などに代表される出来事がわずか百年あまりの間に,喉頭癌を最も恐れられた疾患から最も治療法が確立した頭頸部悪性腫瘍へと変化させた。
今日,T1やT2の早期声帯癌は放射線を中心とした治療で,どの施設でも比較的安定した制御率が得られるようになった。症例数はさほど多くないが,T4の進行声帯癌に関しては頸部リンパ節転移や遠隔転移の存在と絡んで依然制御が困難な場合が多い。T3声帯癌に関しては他の頭頸部癌と異なり,進行癌でありながら頸部リンパ節や遠隔転移を起こしにくく,原発巣の制御自体が予後を左右する重要な因子となる。
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.