増刊号 日本の病院建築
大学附属病院の建築
慶應義塾大学病院を運用して
入 久巳
1
Hisami IRI
1
1慶應義塾大学医学部付属病院中央臨床検査部
pp.147
発行日 1991年11月20日
Published Date 1991/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901092
- 有料閲覧
- 文献概要
義塾創立125年記念事業の一つとして昭和62年に開院した当院の新棟(病棟・手術部および外来診療部,他)を中心とした大学病院機能の整備は,その後の年次計面によって引き継がれた旧棟部分の新棟に対応した諸機能の合理的な再配置と整備・改修計画の完了によって,ようやく本来の機能の発揮をできる段階になってきた,といえます.
かつての戦災で病院施設の大半を焼失した当院の場合,その建物のほとんどが戦後の間もないうちに建設されたものであっただけに,これら建物,施設の老朽化は昭和50年代以降,高度に進展する診療機能との物理的不整合として病院運営上の懸案事項の一つとなってくるに及んで改善は急務となってきたといえます.とりわけ外来診療部門は昭和40年に1日当たり1,500人程度の患者数を想定して設計されたものであっただけに,昭和50年代後半期ですでに設計想定の2倍を上回る患者数を受け入れるのは限界に近く,物理的な狭隘化は“3分診療・3時間待ち”と形容されるような混雑と診療待ち時間の延長傾向が常態化するに至りました.したがって,このような状況を改善して,来院する多数の患者さんのニーズに応えるための診療サービスの追求は当時の病院運用上の緊急で大きな課題でもあったといえます.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.