特集 高齢者の耳鼻咽喉科・頭頸部疾患—治療とリハビリのてびき
8.高齢者の頭頸部悪性腫瘍
④高齢者の頭頸部癌症例における多重癌
堀内 正敏
1
1東海大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.141-145
発行日 1998年4月30日
Published Date 1998/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902712
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はじめに
耳鼻咽喉科臨床における頭頸部癌症例の占める率は,癌専門でない総合病院(大学病院,公立病院)では極めて低い。年間の初診患者数の1%程度である。しかもその中で多重癌を発症し治療を受ける症例は,そのまた15%程度(全年間症例の0.15%)である。70歳以上を高齢者とすると,1年間に総合病院1施設で診察を受ける高齢者の頭頸部癌症例は15〜25人であり,その中の多重癌症例は年間3〜6人であると推定される。臨床統計の結果のみをみるならば,高齢者の頭頸部癌症例における多重癌は極めて稀な課題であるようにみえる。しかし最近の癌治療の現況の報告は,治癒可能な癌症例が増加しているとともに,治癒可能な癌症例における多重癌の発症が急激に増加していることを示している。多重癌は癌治療の新たな課題として対策が必要となってきた。
この論文の目的は,頭頸部癌症例の多重癌治療を行う場合の年齢に関連した臨床的な問題点を明らかにすることである。はじめに頭頸部癌症例における多重癌の特徴を述べ,次いで具体的な高齢者の多重癌症例の呈示を行い,それぞれにおける問題点を検討することとする。
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