特集 高齢者の耳鼻咽喉科・頭頸部疾患—治療とリハビリのてびき
8.高齢者の頭頸部悪性腫瘍
③高齢者の頸部悪性腫瘍
千々和 圭一
1
,
中島 格
1
1久留米大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.135-140
発行日 1998年4月30日
Published Date 1998/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902711
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はじめに
近年,わが国では高齢者社会が進行し,1995年の平均寿命は男性76.4歳,女性82.9歳になっている。死因別にみると悪性新生物による死亡が第1位であり,それに比例して高齢者の癌患者も増加している。当然,頭頸部悪性腫瘍患者の中で高齢者が占める割合も増加しており,そのため診断,治療,アフターケアの面で様々な問題が起こっている。
高齢者は一般に全身主要臓器の生理的機能が低下し,術前に種々の合併疾患を有する場合も少なくない。また,手術侵襲によって術後に種々の合併症を惹起しやすく,年齢に応じたQOLを考慮した治療法を選択する必要がある。さらに,入院後の術前スクリーニング検査で合併症や重複癌を発見されることもあり,そのために目的とする頭頸部癌の治療の開始が遅れ,最悪の場合は治療が不可能なこともあり得る。
また,頭頸部癌でもその発生部位によっては病理組織学的にも様々であり,臨床症状だけではなく治療成績,合併症,そして予後も異なってくるので,年齢のみではなく腫瘍の発生部位に応じた対応も必要となってくる。そこで,喉頭,下咽頭癌については他稿にゆずり,本稿ではその他の頸部悪性腫瘍についてわれわれの施設での症例を中心にその問題点,対処法などについて述べる。なお,高齢者頭頸部癌治療にあたっては,今回70歳以上をもって高齢者と定義した。
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