特集 高齢者の耳鼻咽喉科・頭頸部疾患—治療とリハビリのてびき
8.高齢者の頭頸部悪性腫瘍
②高齢者の喉頭・下咽頭癌
天津 睦郎
1
,
木西 實
1
,
寺岡 優
1
1神戸大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.129-134
発行日 1998年4月30日
Published Date 1998/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902710
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はじめに
近年喉頭癌では声門癌がその多くを占めるようになり,声門癌では早期に症状が出現することから早期癌が半数以上となってきた(表1)。早期癌では放射線治療や顕微鏡下喉頭微細手術による腫瘍摘出術が根治治療として確立されている。一方,喉頭癌でも進行癌や放射線治療後の再発癌に対しては,喉頭摘出術を余儀なくされる場合もある。このように喉頭摘出術を行わねばならない場合には頸部下方に気管孔を作成するとともに音声機能を喪失させることになる。このため,術後のリハビリテーションとして何らかの代用音声を獲得させる試みが行われてきた。
下咽頭癌は症状の発現が遅く進行癌が多数を占める(表2)。頸部リンパ節転移や遠隔転移の頻度が高く,頭頸部癌の中でも予後不良なものの1つであり,喉頭摘出術に加えて食物通路の再建をも行わねばならない場合もある。近年微小血管吻合による遊離組織移植が行われるようになり,食物通路の再建に種々の再建材料が用いられるようになった。また,下咽頭癌症例に対しても喉頭摘出後の音声再獲得が試みられてきた。
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