- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
浜松耳鼻咽喉科サージセンターは,全身麻酔下の手術を短期間の入院で行うことを主目的とした耳鼻咽喉科専門の医療施設で,平成3年1月に設立された(図1)。筆者は,その前身となるクリニックを昭和63年に浜松市に隣接した浜北市に開院し,わずか50坪の小さなクリニックで,外来診療開始前に週2例ほど慢性中耳炎,副鼻腔炎,鼻アレルギーなどを対象とした全身麻酔下の手術を行ってきた。
開業前は,松戸市立病院および浜松医科大学において約10年の間,専ら悪性腫瘍の外科的治療,特に遊離筋皮弁による頭頸部再建術に取り組んできた。したがって開業後の対象疾患は,専門外ともいえる慢性副鼻腔炎や鼻アレルギーなどの慢性炎症性疾患が中心であった。それまで鼻科領域の慢性炎症性疾患に対しては,外来患者の多くを占める小児にも適応可能な有効な治療手段がなく,一時的に症状を改善させるためだけの保存治療を漫然と継続することに物足りなさを感じていた。このようなことから自然に,小児にも適応可能であり,開業形態の中で実施可能な,低侵襲,かつ有効性の高い手術治療に興味をもつようになった。最初に整形外科用の内視鏡を購入し,手術的に開窓した副鼻腔粘膜を術後経過の中で観察するうち,わずかに環境を変化させただけでダイナミックに変動する粘膜に,驚きとともに強く惹きつけられたことを今でも記憶している。
浜北市における3年間の経験を基に,さらに充実した設備の中での新しい治療の模索と実施を目的として,当サージセンターを設立した。当時は,本邦において,day surgeryあるいはサージセンターといった用語も使用されておらず,他科も含めて,全身麻酔下の短期入院を目的とした専門施設は皆無であったと思われる。したがって,参考となる対象がなく,全く手探り状態の中での開設であった。現在まで約10年が経過したが,全身麻酔の総手術件数は8,000件を超える。その間,2〜3年ごとに増改築を繰り返し,現在では敷地1,600坪,総坪数約700坪の建物の中に,19床を有する施設へと発展した。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.