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はじめに
ヒト体平衡機能の研究は決して新しいものではなく,かなり昔から行われていた。体平衡の記録をどのように行うかについて,様々な工夫と苦労が窺われる。台秤の一方を固定した板の上にヒトを立たせ,揺れによって動く秤の針の動きを記録することによって1次元的ではあるが体の揺れを記録している1)。わが国では,頭上に固定した毛筆や針を垂直に立て,その上に黒煙記録紙を置き体動揺を記録した2)。このように,体動揺記録は,西洋では重心動揺から,日本では頭部動揺から始まっている。戦後まもなく福田3)を中心とする檜や時田らが精力的に姿勢制御の研究を進めていった。福田の姿勢研究は,詳細な平衡のメカニズムを実験や理論によって世界をリードしてきた。それは重心動揺解析においても非常に大きな影響を与えた。記録の時代から体動揺の解析へと進むには,高精度で電気的に重心動揺を記録する動揺計がBaron4)によって作られ,コンピュータの出現によって一気に解析の時代に入った。Kapteynら5〜7)はその性能の安定化や臨床応用に尽くすとともに,動揺計や解析法の基準化の中心的役割を果たした。1970年に入りヨーロッパでは動揺周期の解析が盛んに進められていたが,わが国では距離や面積とともに多くの解析指標がもたらされた。体動揺が姿勢反射を反映しているとの基本的な考えのもとに解析が進められてきた。姿勢制御は入力系と出力系の間に強力なcoordinate sys-temが存在する。反射機構による制御であり,このような制御系を体動揺からどこまで知ることができるのであろうか。
本稿では,これらの模索の中で私が進めてきた重心動揺解析指標を整理しながら行ってきた主な解析法と将来について示したい。
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