トピックス 頭頸部癌—私の治療方針と成績(その3)
7.甲状腺癌T4症例
①国立京都病院における甲状腺癌T4症例の治療方針と成績
永原 國彦
1
1国立京都病院耳鼻咽喉科・臨床研究部
pp.813-818
発行日 1998年11月20日
Published Date 1998/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901884
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はじめに
甲状腺の分化癌は,low grade malignancyで99%,intermediate malignancyで85%の20年累積生存率だとする報告1)もみられるほど予後良好な癌である。しかしその報告でも,high grade malignancyの場合には20年累積生存率で57%に低下している。ちなみに全癌中でも最も治療成績が悪いとされる甲状腺未分化癌では,累積5年生存率は3%にすぎない2)。したがって,分化癌といえどもその治療成績を向上させるためには,high grade malignancyを術前に的確に抽出する必要があり,治癒切除に際しては,AGES (Mayo),AMES (Lahey)など各種のgrade分類を参考に,危険因子としての45歳以上,低分化癌,腺外浸潤,大きい原発巣(4cm以上),遠隔転移の有無などを考慮した治療計画を立てる必要がある。そのうえで症例に合わせて合併治癒切除・再建を含む的確な手術を行い,術後には,年齢,性,分化度,隣接臓器浸潤,血管侵襲などに伴う悪性度の評価をもとに長期の経過を追跡し,必要とあれば追加治療を迅速に施行することが大切である。
本稿では,QOLに直接の影響がある局所進行癌T4症例(新鮮例)ならびに,正中部に腫瘍が残存,あるいは再発をきたして当科に紹介された難治例をも合せた隣接臓器浸潤甲状腺癌(Ex2)に対し,過去17年間に施行した自験例における治療方針と,手術手技のポイントならびに治療成績について述べる。
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