鏡下咡語
もう一つの震災
法貴 昭
1
1神戸海星病院
pp.972-973
発行日 1996年11月20日
Published Date 1996/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901487
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早いもので阪神淡路大震災から一年半が過ぎました。さすがに壊れたままの建物は少なくなりましたが,空地と,新しく建築中の建物と,建設関係のトラックや車で渋滞する道路は震災後半年ぐらいから変わらない風景となってしまいました。
わが家もご他聞にもれず,築23年の棟は瓦が落ちるという半壊状態でしたが,新しい棟で寝ていたので幸い怪我一つしませんでした。私の住む西宮市仁川町は多くの住宅が昭和の初めに建てられ,それなりに風格のある住宅地でしたが,9割が全壊しました。人の声で外に出てみると,町の景色は一変し,なんとも言えない静寂が漂っていました。生き埋めになられた近所の方の家族が寝間衣のまま救助を求めて来られたので,とりあえず着るものと靴を渡し駆けつけてみると,2階建ての家が2mぐらいの高さになり,内から人の声がします。
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