特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科手術マニュアル—私の方法
喉頭の手術
1.ラリンゴマイクロサージェリー
福田 宏之
1
1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.110-114
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901470
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はじめに
声帯は非常に小さな臓器である。発声に重要な膜様部はたかだか1cmの長さであり,幅も5mmを超えない。したがって,そこに極めて小さな新生物が生じても発声機能には重要な影響を与える。ピアノの長い弦の上に林檎1つ載っても音が変わるのと似ている。
また声帯は動く臓器である。しかも発声時には男性の日常会話領域では毎秒100回程度,女性では250回程度の振動を行っている。ソプラノなどになると1,000回を超える。そして声帯の振動の本質は声帯粘膜の波動であることが明らかにされている。声帯に良好な粘膜波動が生じるためには声帯粘膜に適度な柔らかさが必要である。したがって,声帯粘膜に瘢痕を生じさせ粘膜を硬くするような行為は極めて有害である。
以上の観点から,声帯の手術には微細な手技が要求され,顕微鏡下手術が行われるようになったものである。
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