特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域 腫脹の診断
12.硬口蓋の腫脹
吉原 俊雄
1
1東京女子医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.62-68
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901020
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はじめに
硬口蓋および軟口蓋を含む口蓋の腫脹を呈する疾患は数多くみられ,炎症性疾患や良性および悪性腫瘍,骨組織の増殖性疾患などがあげられる。疼痛,出血や異和感などの自覚症状で気づくものもあればかなりの大きさになって初めて気づくもの,病院を受診し指摘されるまで全く無症状で見過ごされるものもみられる。
硬口蓋は上顎洞と鼻腔の基底部である口蓋骨が基板となっており、口腔の屋根を形成している。硬口蓋の粘膜は重層扁平上皮で粘膜下組織とともに骨膜に密着しており,粘膜の移動は生じない。硬口蓋の中央は盛り上がって線条となり口蓋縫線を形成する。粘膜下には口蓋腺(小唾液腺)が多数存在し,リンパ組織も散在してみられる。したがって硬口蓋の腫脹の診断,治療を進める場合,その解剖学的特徴より,1)上顎洞の炎症や腫瘍の下方進展,2)口蓋骨自身の腫大。骨腫,骨形成性線維腫(ossifying fibroma)などの骨性疾患,3)粘膜下の小唾液腺由来の腫瘍,4)歯性疾患やその他周辺組織の疾患の波及を念頭に置かねばならない。本項では硬口蓋の腫脹をきたす疾患の具体例を挙げ,その特徴,検査所見,治療法につき述べる。
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