目でみる耳鼻咽喉科
口腔咽頭領域の神経鞘腫
黄 淳一
1
,
野沢 出
1
1山梨医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.304-305
発行日 1994年4月20日
Published Date 1994/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900901
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神経鞘腫(Schwannoma)は,有髄神経のSchwann細胞に由来する外胚葉系腫瘍で,頭頸部領域では第8神経,特に内耳道内の前庭神経から発生する聴神経腫瘍が最も良く知られている。一般に,口腔咽頭領域におけるSchwannomaの発生頻度は全体の10%以下と低いが,そのなかでは舌に比較的多く出現するとされている。今回は極めて珍しい中咽頭後壁に発生した症例と,比較的多い舌に生じた症例のSchwannomaを提示し供覧する。
症例1は27歳の女性,1989年11月頃より咽頭部の違和感と腫脹を自覚し近医受診。精査と加療を目的として,1990年1月15日当科に紹介された。初診時中咽頭正中からやや右側にかけて上咽頭まで及ぶ,表面平滑な弾性硬の正常粘膜に覆われた腫瘤を認めた(図1,ただし手術時所見)。CT所見では中咽頭から上咽頭にかけて2.5×2×5cmの低contrast領域が認められ(図2),MRI所見では,T2強調画像で同部位に境界明瞭な低信号領域を示し,Gd-DTPAによる造影像で強い信号増強を呈したため,神経原性腫瘍が推測された(図3)。同年2月23日中咽頭腫瘍の摘出術を施行,周囲との癒着はなく腫瘍は被膜に沿って一塊に摘出された。重量25.6g,大きさは30×32mm (図4,5)。病理組織学的には,腫瘍の中心部には壊死と出血があり,辺縁部では紡錘形の細胞が線維束を作って不規則に交差し,その中には,核の棚状配列も明瞭に認められ,Antoni type AのSchwannomaと診断(図6)した。
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