トピックス 頭頸部領域の悪性リンパ腫
4.診断と治療—耳鼻咽喉科の立場から
海野 徳二
1
,
野中 聡
1
1旭川医科大学耳鼻咽喉科
pp.215-221
発行日 1994年3月20日
Published Date 1994/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900887
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はじめに
悪性リンパ腫は,耳鼻咽喉科の日常診療でも時に見受けられる疾患である。頭頸部領域のどこにも発生し得るが,比較的多いのはワルダイエル輪や頸部リンパ節である。約20年近く前にこの疾患をまとめて発表したことがあるが1),その時の概念や取り扱いとはかなり変わってきている。その当時は,1)病理組織診断では細網肉腫,リンパ肉腫の分類を用いていた。2)局所所見と組織診断から治療を開始する例が多かった。3)多剤併用化学療法は用いたが、薬剤の種類はかなり異なっていた。4)所見や症状の消失は治癒とは考えずに寛解期間と理解され,これをいかに延長するかが治療の成功とみなされた。5)治療は導人療法と維持療法の組み合わせでなされ,放射線療法もその一手段としての位置を占めた、などに要約される。
耳鼻咽喉科医が取り扱う悪性リンパ腫も,他科を初診するものと本質的には同一の疾患であり,診断方法でも治療方法でも同質であるが,発生部位の差に基づく多少の相違がある。最近の5年間に当科で診断し,あるいは治療を行った症例を引用しながら,診断法,治療法について述べる。この疾患に関して,5年間は余りにも短すぎるので治療成績には触れない。また,基準を決めて一定の方法で診断したり治療したりしたのではなく,記録されたカルテからretrospectiveに調査したものであるから,或る診断法,或る治療法に対する評価にもならない。しかし,却ってそのために,一般耳鼻咽喉科医が日常行う診療への何らかの指針が得られるのではないかと考えた。
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