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はじめに
補聴器のフィッティングとは,難聴者に最も適合した補聴器を選択,調整することであるが,難聴者の希望は難聴の程度,性質や難聴者の社会的立場によって異なってくる。会議で重要な情報を正確に聞き取る必要がある人,音をキャッチできればその目的を達成する人,またワンマンバスの運転手のように左側からの音声が特に重要な人など様々である。しかし一般的には,音声言語情報を正しく,快適に得ることが補聴器の目標となると考えられるので,「正しく」と「快適」を念頭において作業を進めていくことになる。
現在補聴器のフィッティングに関して,普遍的に最上とされる方法は確立されていない。Car-hart1)が述べているように,補聴器の選択法は個個の補聴器の将来における日常生活での有効性を予測するものでなければならないが,現在はこのことを最も効率的に実現する力法を研究中の段階であり,この点に関しては多くの記述がある2〜6)。このような観点から,われわれも補聴器のフィッティングや評価に関し種々の試みを行い,日常の補聴器外来で応用しているが,この中には将来の補聴器のための研究的側面を持ったものもある。また補聴器外来も大学病院などと第一線の開業の先生方とは設備,規模などの点で相違があると考えられるので,本稿ではまず第1段階として厳密な方法や研究中の方法,ならびに理論などは省略しておおざっぱに述べ,とりあえず初めての方がフィッティソグに取り組んで頂けるようにし,より厳密な記載は第2段階,解説,注などとしてその後ろに記載することにした。したがって,これから補聴器に取り組もうとされている先生方は,まず<第1段階>の部分を読んで実際にフィッティングして頂きたい。
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