トピックス 鼻茸
形態面からみた鼻茸の病態について
高坂 知節
1
1東北大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.1141-1147
発行日 1990年12月20日
Published Date 1990/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900204
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はじめに
鼻茸の成因とその治療法に関する研究テーマは,ヒポクラテスの時代に遡るといわれるほどに古典的なテーマのひとつであるが,近代免疫アレルギー学の進歩した現在に至っても,なお不詳の部分が残されていて,臨床的にも鼻茸が完全にコントロールされているとは云い難い。かつて慢性副鼻腔炎が全盛であった昭和40年代前半までは,我々の領域では鼻副鼻腔根本手術が最も頻繁に行われた手術のひとつであり,そのほとんどの症例で鼻茸を伴うのが慣例であった。従って鼻茸は慢性炎症に付随するもので当然の帰結と理解されていたが,今日,慢性副鼻腔炎の軽症化がすすみ,手術件数が著しく減少したにもかかわらず,依然として再発性の鼻茸は減少せず,若い年齢層にも発症するものがあり,鼻茸の成因病態に関してもう一度検討してみようという機運が盛り上がってきた。このような歴史的背景には,とりもなおさず鼻茸病態の多様性が示されているものと考え,本稿では,特に微細構造レベルでの形態変化を中心に鼻茸の病理を検討し,その成因についての見解を述べたい。
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