トピックス 嗅覚障害
嗅覚障害治療における経口剤とその使用法
牧野 総太郎
1
,
鎌田 英男
2
1群馬県立がんセンター頭頸部
2群馬大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.749-751
発行日 1990年9月20日
Published Date 1990/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900129
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
嗅覚障害は種々の疾病により惹起されるが,これらの中で耳鼻咽喉科医がその治療を担当するのは,頭蓋内に明らかな損傷のない頭部外傷後の嗅覚障害や原因不明の嗅覚障害などもあるが,嗅覚障害者の80%を占める鼻副鼻腔疾患に起因するものが中心である。鼻副鼻腔疾患により起こる嗅覚障害の中には,比較的早期に治癒する例がある一方,頑固な基礎疾病のため,その嗅覚障害の治療に難渋することがしばしぼである。つまり鼻腔内にすでに長期間罹患している原疾病をもち,それが悪化を繰り返し易く治癒しがたいこと,症例によって不可逆的な萎縮性病変に移行するなどである。そこではじめに治療例を提示し,嗅覚障害の治療法について述べたい。
慢性副鼻腔炎による混合性嗅覚脱失の長期治療例の1症例の全経過を図1に示す。点を結ぶ折れ線は平均嗅力損失の推移を示し,正常となるまでに3年7ヵ月を要している。本例の初診時の鼻腔所見は両側中鼻道に中等度の鼻茸があり,中甲介は浮腫性で嗅裂は閉鎖していた。まずチスタニン300mg,ユベラN600mg毎日服用からはじめ,時折セレスタミン1錠ないし2錠を投与。次いで鼻茸消失し,オルファクトグラム上の改善もみられ,0.1%リンデロン点鼻を併用。さらに嗅覚改善したが鼻粘膜が乾燥しはじめ,ユベラNの内服だけとし,鼻粘膜の改善と嗅覚の完全治癒を得た。粘膜炎の再燃を懸念しその後1年以上の治療と経過観察がされた。その他の薬剤は消炎酵素剤などである。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.